三島・清水町久米田の正眼寺の奥様・福井ふみ子さんを偲んで、
「小寺の灯」より掲載させて頂いております。

六genji1 090










写真は
本文とは関係ありません





つれづれの記
5月
 
5月生まれの私は、5月がこよなくすきです。
新緑に木々が燃えて生き生きと輝く5月の明るさに身心が洗われるようで、
すがすがしく、若々しい気持ちになります。
正眼寺に参りまして、私が一番嬉しかったことは、木々がたくさん茂っていることでした。
楠の大樹の見事さに驚きました。
「このお寺は木がたくさんあっていいですね」
と和尚さんに申し上げますと、
「木は気が休まるといいます」
とおっしゃいました。

私は二十五年前、カリエスで入院している時、
窓から見える1本の銀杏の木に慰められ励まされました。
とくに5月はみどり児のちいさい握りこぶしが少しずつ開いて行くように、
銀杏の木の芽の育つ日々が楽しみでした。
病状が悪化した時でも、新緑の頃は、心が生き生きとして、生き抜く希望に燃えました。
9年間仰臥した私の唯一の伴侶は手鏡でした。
手鏡に写る空や銀杏と対話しました。

中村汀女先生の「風花」誌10周年記念句会の時
「新樹」の題に即興的にできた私の句

     
生きむとす生きむとす新樹手鏡に

の投句が入選し、渋団扇:シブウチワに先生の

     
きらきらと浜昼顔が先んじぬ

の賞を拝受し、好きな新緑の句の入選なので、本当に嬉しく思いました。

風薫る五月、五月晴れに泳ぐ鯉のぼり、
カラカラときらめき鳴る矢車の音、
あたりがまばゆいように若葉が光り、
大地に鯉のぼりの影がおどる。
5月が来ると、毎年、折り紙で鯉を折ります。
目玉とうろこを描き、竹箒の古材を洗って糸で折紙の鯉を結び、
手作りの鯉のぼりを作って子供達にくれています。

昔、釣道楽の父は。海や川へよく出かけました。
ある時、父は新聞に出るほどの七瀧の大鯉を釣りましたが、
七瀧の主だと申され、
それ以来プツリと釣りをやめてしまいました。
五月に縁のある鯉のぼりを折り紙で毎年折っては、
七瀧の主の供養と子供たちにプレゼントしています。

立夏を迎え。炉から風炉に替り、開け放たれた緑したたる庭を見つつ、
わが誕生日の一服の茶はまことに有難く、
しみじみと一椀のみどり鮮やかなお薄をいただく幸せを思います。
                                                  福井ふみ子~小寺の灯より~ 



つつじ(白)



一切有為法 如夢幻泡影 如露亦如雷 應作如是觀






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